中南米のひまじん。

不登校→大学院→青年海外協力隊→パナマ=ひまじん。スペイン語勉強中。そんな暇でしょうがないひまじんが、意識高いフリしてなんかする。

「ひまじんは、いかにして『ひまじん』になったのかその誕生ストーリー」 その3 完結編

 

残ったのは

無力感、そして真っ白の予定帳。

僕はそう、『ひまじん』になったのです。

(本文から抜粋)

 

 

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こんにちは。おきくです。

第三回に渡って

かの有名な「ひまじん」にインタビュー行ってきました

 

第二回までは彼の輝かしい

活躍が描かれています。

 

しかし、今日明かされる

彼の最大の苦難。

 

かれはいかにして「ひまじん」に

なってしまったのか。。

 

その真実が今日

だいたい68%くらい明かされる!!

 

今日が最後!

たぶん!

 

 

ではどうぞ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ぼく、クビになったんですよ」

 

 

なんとも息苦しい沈黙が続いた。

 

沈黙を続けるなんて

インタビューアー失格だということは

僕自身、重々承知している。

 

しかし、なにも返す言葉が浮かばなかった。

同時に、

何も返してはいけないような気さえした。

 

「ひまじん」さんも

言葉を言い放ってから

どことなく周りを眺めていただけだった。

 

いや、もしかしたら目の前ではなく、

遠いあの日を眺めていたのかもしれない。

 

 

その沈黙は意外な形で破られた。

 

 

*なにか追加のご注文はありますでしょうか?

 

 

店員さんの一言で僕は我に返った。

この機会を逃すわけにはいかない。

 

ーー「ひまじん」さん、どうです?

なにか甘いものでも。

なんでもここは、チョコレートケーキが

美味しいと評判らしいですよ。

 

すこしためらった後、「ひまじん」さんは

消え入りそうな声でこう言った。

 

「チョコレート・・ですか。

すいません。パナマに行ってからなんかチョコレートが

トラウマになっていて。。。」

 

tokotokok-k.hatenablog.jp

 

 

 

ーーそう、ですか。

 

しまった。やってしまった。。

 

 

「だからあの、水羊羹下さい。」

 

 

 

ーー!!??

 

 

 

とまぁ、こんな感じで場がなんとなく和み、

 

インタビューを続行することにした。

 

 

ーーえーっと、すいません。

少しお聞きしにくいのですが、そのクビになったとは

一体どういうことでしょうか?

 

 

運ばれて来た水羊羹を

ココアシガレット二本で器用にすくって食べていた

「ひまじん」さんのその手が止まった。

 

(ココアシガレットがどっから出て来たかは

僕は知る由もない。)

 

 

「そうですね。ちょっと長くなりますが、

その経緯を説明しますね」

 

ーーはい、よろしくお願いします。

 

 

「先ほども言いましたが、校長先生に呼び出しを食らったわけです」

 

ーーえぇ、そして

「『もうやることはない』と伝えた」と、

記憶しています。

 

 

「そうなんです。そしたら校長が、

『なら担当を変えろ』

と言ってきたのです。もちろん気持ちはわかります。

 

学校側としてはもっと多くの教員に変わって欲しい、

良くなって欲しいわけですから。

担当クラスの雰囲気がすごく良くなっていたのは

校長も知っていましたし。」

 

(担当クラスの子どもたち。わからない子をみんなで助けて考え合う様子。

決して答えを教えてはいけないと伝えていた。)

 

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「でも僕の心はそう簡単に割り切れるものではないわけです。」

 

 

ーーそりゃ今までずっと一緒にやってきたわけですからね。

  お気持ちわかります。

  もしかしてそれが「クビ」の原因ですか?

 

 

「いえ、そうではありません。

確かに、今まで面倒見てきた子どもたち、そして

相方との縁は切りたくなかった。でも同時に

限界も感じていた。だからこそ、校長に

どっちも担当させてくれと言ったのです。」

 

ーーなるほど。それは可能だったのですか?

 

 

「えぇ、校長も二つともできるなら問題ない、

と許可をくれました。」

 

 

ーーならよかったんじゃないですか?

 

 

「いえ、これは僕の考えが甘かったです

二つの学年を同時に扱う、というのは想像以上に

難しかった。ましてや新しい担当は

自校のセミナーには参加していたものの、

能力的にはほぼ初期状態でしたから

授業の展開を説明する、というよりも

授業中に携帯をいじるな。

というレベルからのスタートでした」

 

 

ーーえ?授業中に、ですか。

 

「えぇ。信じられないかもしれませんが、

これがパナマでは、少なくとも僕の学校では

当たり前の授業風景です」

 

 

ーーそう、だったんですね。

 

 

「もちろん僕の相方も最初はそうでした。

でも辛坊強く説明して、

今は授業中に椅子に座ることなく、

子どもたちのノートをチェックするようになりました。」

 

(子どもたちのノートをチェックする相方さん。これだけで大きな一歩だったと、『ひまじん』さんは語る)

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ーーなるほど。それはすごい進歩ですね。

 

 

「その分、新しい担当になった時、

『あぁ、ここからか、』と精神的にキツかったのを覚えてます。」

 

 

ーーそうですよね。お気持ちお察しします。

 

 

「そうなるとやはり、

新しい担任と打ち合わせしたり、

授業を行うにあたって大切なものはなにか、

という話をするために、時間が取られ

元相方の授業はあまりじっくり見れなくなっていきました」

 

 

ーーなるほど。

 

「そして久しぶりに元相方の授業を見に行ったんです。

そしてら・・・」

 

言葉につまる「ひまじん」さん。

水を飲む。

 

・・・

良く見たら羊羹が喉に詰まっていて

水で流し込んでいただけだった。

 

 

ーー授業はどうだったんですか?

 

 

「びっくりしました。携帯こそいじってないものの、

授業が授業として成り立っていなかったので。

目を疑いました。言葉が出ませんでした。」

 

ーーそ。。。そんな。。どうしたんですか?

 

「単元が変わってたんです。

今まで一緒にやってきた単元、分数だったのですが、

それが終わって新しい単元になってたのです。」

 

ーーそうだったんですか。

 

「僕がこの学校に派遣されてきた時と同じように、

子どものことを一切考えないような、そんな授業でした

もちろん教材も何もかもなく、板書も行き当たりばったり。

計画も練ってませんでした。」

 

 

 

ーーそれで、どうされたんですか?

 

 

「呼び出しましたよ。そりゃもちろん。

どうしたんだって。なんでこんな授業をしてるんだって。」

 

ーーそしたらなんと?

 

「彼女、こう言ったんです。

 

もう、『日本式の授業はやらない』って」

 

 

ーー・・・え?

 

「それ言われた時、目の前が真っ白になりましたよ。

言葉の意味が最初わかりませんでした。

え?え?どういうこと?って

でも言葉が出なくて立ちすくんでしまいました。」

 

 

ーー原因はなんだったんですか?

 

 

「はっきりしたことはわかりません。

ただ、彼女がいうには、

 

『日本式の授業は確かに必要だし面白い。

でもそれは私たちにとっては難しい。

それに時間がかかる。

でも私には時間がない。

だから、パナマ式でいく』

と」

 

ーーそんな・・・

 

 

「さすがにショックでした

あ、大事なことが伝わってなかったんだな。って」

 

ゆっくり、重い口どりで

こう続ける。

 

「確かに、教員たちに時間がないのはわかります。

それほどパナマのカリキュラムは時間に対しての量が本当に多い。

ありえないくらいです。

 

でもあくまで

『授業は子どもたちのためにやるんだ』って

『カリキュラムを終わらせる=子どもたちの学びではない』

ということを

口が酸っぱくなるほど伝えてきたつもりだったんですが、

最後にはやはり、自分の仕事を終わらせる、という

ところに目がいってしまたんです。きっと。

単元が変わって、考えてしまってんでしょうね。

終わらせるべき内容と、時間の兼ね合いを。」

 

 

「その時、僕の中で積み上げてきた、

いや『積み上げてきたつもり』だったものは

実は『砂上の楼閣』だったんだな。

って思い知らされました。

そして、自分の成功を過信して疑わなかった僕自身を

恨みました。」

 

ーーそ、それ・・

 

言葉を挟む間も無く、彼はこう続けた。

 

 

「そして聞いたんですよ。

『じゃあもう僕は、僕の助けはいらないの?』

って」

 

 

ーー・・・それでなんと?

 

 

 

「ーーいらない、と。」

 

 

 

 

重苦しい沈黙が再び二人を包んだ。

 

否、

水羊羹を食べ終え、

ココアシガレットをぽりぽりする音は

絶えず聞こえていた。

 

 

「それで、僕は、本当に情けない話ですが、

諦めたんです。『もういいや。』って

 

プツンと全てが切れたような気がしました」

 

 

ーーそれはいつ頃の話ですか?

 

 

「だいたい10月くらいです」

 

 

ーーそれで、どうなったんですか?

 

 

 

「どうにもなりませんよ。

ただ、残ったのは無力感、だけです。

そして真っ白の予定帳。

 

僕はそう、『ひまじん』になったのです。」

 

 

誰かがカフェの扉を開いた。

 

そっと涼しい風が何も言わず

僕らの頬を撫でて、

また、消えた。

 

その行く先を誰にも知らせぬまま。

 

 

 

これが「ひまじん」さんが

『ひまじん』になったコトの経緯である。

 

最後の最後に踏ん張れなかった。

最後の最後で諦めてしまった。

 

あの時もし続けていたら。

あの時もし、説得できていたら。

 

もしかしたら今も『ひまじん』さんは

学校の廊下を走り回っていたのかもしれない。

 

でもその未来を

もう、誰も創ることはできない。

 

その未知を歩くことはできない。

 

ただ、過ぎ行く時間を、

流れゆく川の流れを、

遠くから眺めるだけである。

 

一人の暇な人間として。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

え、あの、一応これ、オチ。でいいよね?

完結した。って言っていいよね?

 

今に続く話とか、いらないよね?

 

 

え?え?

いらないよね?

え?いる? 

 

11月らへんから今にかけて?

 

 

えーーー。

じゃあ書くよ。

たぶん。